乳がんとは

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乳がんとは

同じ乳がんでも一人一人のがんは大きくなる早さ、転移のしやすさ、治療に対する反応等が異なっています。ここでは他のがんと比べた場合の一般的な特徴を述べます。

治りやすいがんです

大切な乳房にメスを入れるわけですから精神的な苦痛を伴いますが、他のがんと比べて治りやすいがんだといえます。それは抗がん剤、ホルモン剤、放射線など手術以外にも有効な治療法が多いこともありますが、乳がんの発育が比較的ゆっくりしていることも理由の一つです。早く発見して適切な治療を受ければほとんどの乳がんは治りますし、進行したがんでも必ず適切な治療法があります。

逆に他のがんの治癒の目安が5年であるところ、乳がんの発育がゆっくりなため5年目以降の再発が乳がん再発の2、3割を占めます。そこで術後の定期検診は普通10年間行います。

治療法がほぼ確立・進歩しています

欧米では手術法や化学療法などについて大規模な臨床試験が数多く行われており、その結果を基にした世界標準的な治療ガイドラインがあります。私たちもそのガイドラインに沿った治療を行っています。常にいくつもの大規模臨床試験が進行中であり、私たちはより良い治療を行うためにその結果を注視しています。

自己検診が可能です

自己検診で早い段階のがんが見つかることがあります。生理前は乳腺が固くなるので、検診は生理の後毎月日を決めて行ってください。少しでも異常を感じたら迷わず専門医を受診してください。自己検診は大切ですが、自己診断は禁物です。

乳房の大きさやがんの形状によっては触知することが難しいことがありますので、もちろん医療機関での検診もお勧めします。

乳がんの成り立ち

乳がんの発生と種類

乳腺は乳汁を作る細胞の集まりですが、ちょうどブドウの房のように乳管と呼ばれるでつながり、乳管は乳首(乳頭)に開口しています。乳がんは大抵この乳管の内側の細胞から発生しています。がんが乳管の内側にとどまるものを非浸潤性腺管がん、乳管壁を食い破って外に出たものを浸潤性腺管がんといいます。

浸潤性腺管がんはまわりのリンパ管や血管に入り込み、リンパ節転移や肺や肝臓などへの遠隔転移を起こすことがあります。また乳管内腔を伝わっていく進展様式もあります。非浸潤性腺管がんが乳管を伝わって乳頭に到り、乳頭に湿疹ができたようになるものを特にパジェット病といいます。

乳汁を作る細胞から発生するがん(小葉がんといいます)の頻度は少なく、乳房のほかの組織たとえば脂肪組織や血管・リンパ組織から発生することは稀です。ごく稀に他の臓器のがんからの転移のことがあります。これら稀ながんの場合治療法が異なる場合があります。

乳がんと女性ホルモン

乳がんには女性ホルモンがその発育に関わるタイプとそうでないタイプがあります。前者(ホルモン依存性乳がん)の割合は約7割で、治療にはホルモン療法が威力を発揮します。女性ホルモン分泌の目安は月経で、そのあるなしによってホルモン療法は異なります。

更年期障害の治療に女性ホルモンを投与することがありますが(HRT)、米国での大規模調査でHRT施行によって乳がんの発生率がやや増加したと報告されています。

閉経前乳がんの場合、制がん剤には卵巣機能を抑制するものが頻用されるため治療を行った後に妊娠できなくなることがあります。治療後に妊娠した場合は経過・挙児とも特に通常と変わりがないと報告されています。

なお妊娠・授乳中の乳がんは発見が遅れがちになります。乳房やわきのしこりに気づいたらすぐに医師に相談してください。

男性乳がん

全乳がんの1%の割合ですが、乳がんは男性にも発症します。男性で乳輪部にしこりがあるとき、多くはホルモンのアンバランスによるものですが、中高年を好発年齢として乳がんのことがあります。

乳がんの症状

他のがんと同じく乳がんもたいていの場合痛みを伴いません。乳がんは早い段階で自覚することができるので普段から乳房に気をつけることは大切ですが、もっと大切なことは異常を感じたらすぐに医療機関を受診する勇気を持つことです。以下に主な乳がんの症状を列挙しますが、いずれの症状も良性疾患との鑑別が必要です。乳がんは通常一側性ですが両側にできることもあります。

しこり

乳房のしこりは乳がんの主な症状です。乳頭を中心に上方・外側が好発部位ですが、乳腺があればどこからでも発症するので検診は鎖骨の下から広い範囲を行います。わきの下や首のリンパ節転移によるしこりが初発症状のこともあります。乳房全体を硬く感じることもあります。

痛み

乳がんそのものは痛みませんが回りの組織の変化によって痛みを感じることがあります。

乳頭分泌

乳管の中で大きくなった腫瘍の症状です。良性でもしばしば血液が混じります。

乳房皮膚の変化

皮膚が赤くなったり浮腫のためオレンジの皮のようになることがあります。腫瘍に引き込まれてくぼみができることや腫瘍が顔を出して出血することもあります。

乳頭の変化

腫瘍に引き込まれて乳頭が陥没することがあります。前述のパジェット病の場合湿疹のようになります。

乳がんのセルフチェック

チェックポイント

  • 乳房の一部が硬くないか
  • しこりや硬いこぶがないか
  • ひきつれ、くぼみ、乳輪の変化がないか
  • 乳首のへこみ、湿疹がないか
  • 乳首から分泌物がないか

月に1回の自己チェック

自己診断は、生理が終わった後4~5日が適当です。閉経後の人は、毎月、日を決めて行ってください。

鏡の前で乳房の形をチェック

入浴前に鏡の前で。

わきの下のリンパ節と乳頭をチェック

お風呂やシャワーの時、石鹸がついた手で触れると乳房の凹凸がよくわかります。

あおむけになってしこりをチェック

おやすみ前にベッドのうえで。

詳しいチェック方法はこちら(認定NPO法人乳房健康研究会)